生活実態調査から「悩み」について思うこと

芦屋大学 教育相談所 教育学科 教授 三浦正樹 


 友だちができない、単位が取れるかどうか心配、やることが多すぎて時間が足りないなど大学生にはさまざまな悩みがあると思います。でも悩みを持つのは自分だけなのでしょうか。

今回は大学生協が行っている生活実態調査をもとに大学生の悩みの種類についてみてみたいと思います。
調査結果によると大学生の悩みの上位のものとして「生活費やお金のこと」47.4%、「授業・レポート等勉学上のこと」46.6%、「就職のこと」41.2%がありました。その他にも「友だちができない(いない)・対人関係がうまくいかないこと」「恋愛のこと」「自分の性格や能力のこと」などの悩みも多くありました。

つまり、多くの大学生は様々な悩みを抱えているということが分かります。結果についてもう少し詳しく見てみましょう。
 年ごとの変化を見ると最近の傾向として「時間が足りないこと」の回答割合が増えていることが指摘されています。これは授業のためにかける時間の増加、趣味等に費やす時間の増加などでいわゆる「タイムパフォーマンス」を重視する傾向を反映しているのではと報告書では分析しています。なお調査年はコロナ禍3年目でしたが、当初増加した健康不安は落ち着きを見せ、新型コロナに関する悩みは3.7%と減少していました。


 この調査では住居形態別(自宅・下宿)、学部別(文系・理系)、学年別の比較も行っています。自宅生の悩みで一番多いのは「授業・レポート等勉学上のこと」47.2%であるのに対し、下宿生で一番多いのは「生活費やお金のこと」56.2%となっていました(自宅生は38.0%)。これは下宿生の場合、自宅生にくらべ食費・住居費などが多くかかるのである意味当然の結果かと思います。
 文系と理系を比較すると文系では「就職のこと」が47.6%と一番多いのに対し、理系では「授業・レポート等勉学上のこと」が52.0%と一番多くなっています。一方理系では就職の悩みは37.5%と文系にくらべると少なくなっています。理系は文系にくらべ進路的には明るいが、授業できっちり単位を取るのが難しいというところでしょうか。
 学年別の違いも興味深いものがあります。1・2年生の悩みで一番多いのは「授業・レポート等勉学上のこと」でそれぞれ54.5%・52.2%となっています。入学当初は大学に慣れるのが大変で、まずは授業の悩みが多いというのは納得できるところです。それが3年生になると「就職のこと」が59.0%と一番多くなるというのは日本の大学生の就職事情を反映しているのでしょう。ちなみに4年生では就職の悩みは33.1%と減少しています。

 さて、4月からはそれぞれ新しい学年になると思います。
現在1年生の皆さん。大学生活に慣れましたか。2年生からうまくやって行けそうですか。
現在2年生の皆さん。3年生になると専門ゼミや様々な実習が始まります。やって行けそうですか。
現在3年生の皆さん。4年生ではいよいよ就活が本格化しますね。
現在4年生の皆さんは、4月からは社会人ですね。
 
それぞれの段階でそれぞれの悩みがあると思いますが、悩みというのはだれもが多かれ少なかれ抱えているものです。

新年度になってもこれまでの経験や学習をうまく活かして乗り切っていってほしいと思います。

 
教育相談所では、皆さんが豊かな学生生活を送ることができるよう支援や相談に応じています。

もし抱えきれない悩みがありましたら、いつでも気軽に相談してください。
参考資料:第58回学生生活実態調査 概要報告
https://www.univcoop.or.jp/press/life/pdf/pdf_report58.pdf