令和6年度 第58回学位記授与式を挙行しました
令和7年3月8日(土)、本学 福山記念館Aホールにて、
芦屋大学大学院・芦屋大学の学位記の授与式を行いました。
授与式に続き、学長より卒業生一人ひとりに学位記が授与されました。
個人授与に引き続き、ホテルオークラ神戸に移動し謝恩会が執り行われました。
本学での学び、教職員や友人との出会いを財産にし、
社会で活躍されることを心よりお祈り申し上げます。
ご卒業の皆様、保護者の皆様、このたびは誠におめでとうございます。
教職員一同、皆様のご活躍を心より祈念いたしております。
令和6年度 学位記授与式 学長式辞
寒かった今年の冬がようやく終わりを迎え、梅の花がほころぶこの季節に、学位記授与式をむかえられた芦屋大学大学院修了生、芦屋大学卒業生のみなさん、本日は本当におめでとうございます。みなさんは、学びと努力を経て、大きな成果を成し遂げられました。卒業の瞬間を迎えることができたのは、皆さんが目標に向かって着実に進み続けたからであり、皆さんの努力の賜物です。皆さん一人ひとりの努力を心から誇りに思います。
そして、これまで皆さんをいつくしみ、この晴れの日を心待ちにしておられた保護者、ご家族、ご友人の皆様方にも心からお祝いを申し上げたいと思います。また、本日、ご出席を賜っておりますご来賓の方々にも心より御礼申し上げます。卒業生のみなさんの背後には、常に支えてくれた多くの人々がいたことを決して忘れないでください。
今年の卒業生の皆さんは、私が芦屋大学に赴任した年に入学されました。思い返せば、皆さんの学生生活の最初の数年はパンデミックの影響により、多くの活動が制限される日々でした。それが次第にキャンパスに日常が戻り、講義やゼミ活動、クラブ活動、そして学園祭やスポーツ交流会なども平常にもどりました。卒業生の皆さんが、学生会や実行委員会を通じて、これらのイベントを率先して動かしてくれたこともまぢかで見てきました。芦屋大学を作り上げているのは学生の皆さんであることを実感する4年間でした。卒業生の皆さんは、大学生活を通じて、多くを学び、立派に成長されたと思います。
皆さんがこれから羽ばたくのは、気候変動によって大規模災害が予想され、自然破壊、戦争の継続と、困難な課題が山積みの世界です。いつまた、疫病や大きな災害が、私たちの「ごくあたりまえの日常」を壊し、我々を混乱に陥れるやもしれません。しかし、人類の約40万年の歴史をふりかえると、先達たちは疫病や大規模災害、そして戦争などの数々の大きな困難を、知恵と技術を駆使して幾度も乗り越え、世界を、人間の世界をゆたかにしてきたことが分かります。人間にはそのような素晴らしい力があります。
私がこの一年で最も感激したのが『アウシュビッツの小さな厩番』という本でした。14歳から10年にわたり強制収容を経験し、アウシュビッツを生き延びた少年の経験を描いた本です。ホロコーストの悲惨さについてはよく知っていましたが、そこで少年期を過ごした人たちがいることは全く認識していませんでした。彼は家族を失い、人間にとって重要な成長期を、飢餓、死と隣り合わせの恐怖など、精神的肉体的にぎりぎりの状態で過ごし、奇跡的に解放された後、人間としての育ちなおしが必要だったことが語られます。そして、そのような経験にもかかわらず、この本の最後で語られるのは「寛容」です。人間は、多く間違いをおかし、敵を作り、攻撃しますが、大変に困難ではあるものの、和解や相互理解につなげることのできる素晴らしい力も持っていることが改めて胸に迫りました。
最終講話でお話ししましたように、学びは大学卒業で終わるものではなく、一生続きます。世界には無数の、多様な人々が、多様な経験をして生きています。卒業後も、自分の小さな世界に閉じこもるのではなく、全く異なる日常を生きる人々のリアルに触れるという学びをつづけてください。本や映画から学ぶのでもいいですし、新しい人との出会いでもいいと思います。そこから自分とは異なる現実、リアルを知ってください。そのような学びは皆さんの今後の世界を、確実に豊かで、自由で、楽しいものにするはずです。なぜなら、異なるリアルを知り、想像できること、しかもそれが無数にあることを知ることは、皆さんが困難に直面した時、自分がこだわっていることは、唯一つのリアルではないということを知ることになるからです。全く異なるあり方も可能である、ということを知ることになるのです。それは皆さんの人生を、可能性にみちた素晴らしいものとするはずです。
皆さんのこれからの人生が、輝きに満ち、幸多いものとなりますことを心からお祈りし、私の式辞とさせていただきます。
令和7年3月8日
学長 窪田 幸子