令和3年度学位記授与式を挙行しました

2022年03月15日

本学 福山記念館Aホールにて、令和3年度芦屋大学大学院・芦屋大学の学位記授与式を挙行しました。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、拡大防止と感染予防のため、卒業生、修了生とそのご家族の安全を配慮し、学部ごとにわけた2部制で執り行われました。

式典では、学位記授与に続き、窪田幸子学長より式辞が贈られ、山田英男理事長よりお祝いと激励の言葉を述べられました。

卒業生並びに修了生の皆様、おめでとうございます。教職員一同、皆様のご活躍を心より祈念いたしております。

 

 

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令和3年度 学位記授与式 学長式辞

みなさま、ご卒業おめでとうございます。本日、令和三年度の芦屋大学、ならびに芦屋大学大学院の学位記授与式をこうして対面で行うことができましたことを、皆さまとご一緒に喜びたいと思います。このよき日に芦屋大学から社会に旅立つ学生のみなさんは誇らしい思いでいっぱいでしょうし、この晴れの日を心待ちにしておられた保護者、ご家族の皆様方におかれましては大変におよろこびのことと存じます。心からお祝いを申し上げたいと思います。先日、学生代表の方たちから大学に記念費をいただきました。学園の今後の発展のためにありがたく使わせ頂きます。芦屋大学への皆さんのあたたかな思いに触れ、とてもうれしく思いました。ありがとうございます。

 さて、今年の卒業生の皆さんは、大学生活の半分の二年間をコロナ禍で過ごすことになってしまいました。移動を制限され、家に閉じこめられ、本来であればできたはずの、海外留学やスポーツなど多くの学生生活の重要な活動も、学友との交流も十分にできず、悔しい思いをされたことも多かったことと思います。本当にこの二年間は、全ての人々にとって未曾有の困難な経験となりました。しかし一方で、困難な現実に直面したとき、私たちは常識を変え、生活を変えることができるのだということを実感した機会でもあったと思います。大学生活でそれを経験した皆さんは“視点をかえてみると幸運だった”といえるのかもしれません。

 私は最近、『これは水です』というデヴィット・ウォレスという方の素敵な一冊の本に出会いました。本は、メダカの小さなお話しから始まります。
二匹のメダカが泳いでいるところに、年長のメダカが泳いできて声をかけます。「やあ、坊やたち、水はどうだい?」。しばらくして、二匹のメダカはお互いを見ていいます。「いったい水ってなんのこと?」この小話のポイントは、ごく普通のありきたりな、一番大切な現実はえてして自分で気づいていないものである、ということです。

人間はだれでも、自分を中心に世界を理解しています。何が現実であるのか、何が大切であり、どう動くべきなのか、自分が見て触れることのできる現実が唯一の本当で、それにもとづいて「何が大切なのかなんて当たり前で、わかりきっている」と思いこんでしまっています。我々はみんなそのように初期設定されているとウォレスはいいます。しかし、そこから変わることはできます。大学での学びが我々にもたらすのは、このごく自然に人間に組み込まれている「すべての中心が自分」であり、自分のレンズからモノを見て解釈するというあり方を手直しする方法です。自分のレンズからの現実だけが本当なのではなく、他の可能性、ほかの選択肢があることを知ることです。大学での学びは自分と自分の確信に批判的な自意識を持つことが可能にします。他の選択肢を客観的にみることができるようになり、自分の現実だけが本当なのではないのかもしれないとの気づきにつながります。何を考えるべきかを選び、何をどう考えるかコントロールするすべを身につけるのです。大学で行われるべき教養教育とは、本来は「人間を自由にする技芸」であり、それを身につけることは本当の意味での自由を私たちにもたらすものです。

 簡単にはできないことに思えるでしょうし、大学を卒業する今になっても、まだそんなこと身についていない、と思っている人もいるかもしれません。しかし、みなさんは、パンデミックの新しい日常を生きてきました。現実はこんなにも変わり、大切なものも変化することを経験しました。そして、その新しい現実、新しいリアルに適応してきたのです。私たちのそれまで経験してきたごく当たり前だと思っていた現実とは異なる世界があることを知り、それに適応したのです。この二年間に経験した現実の転換、そしてそれに適応してきた経験は、大きな学びのきっかけとなります。この気付きはチャンスです。世界にはさらに多様な現実、リアルがあります。その多様性への想像力を広げ、選択肢を考えること、それは皆さんの今後の世界を自由に、豊かにするはずです。われわれの学びは一生つづくことを忘れないでください。

 皆さんが羽ばたいていこうとする現代社会は、バラ色ではありません。経済は低調で、少子高齢化社会であり、地球環境の危機も現実的な課題として我々に迫ってきています。ウクライナでの戦争は続いており、そのほかの国際問題、政治問題も山積みです。卒業後、日常生活は単純な繰り返しと会社との往復で、わくわくするようなことも少ないのかもしれません。そんな中にあって、皆さんの力となるのは、この多様性、異なるリアルへの想像力です。自分は、一番大切な現実、メダカの「水」に気づいていないかもしれないことを覚えていてください。そして、自分の今のこだわりは、唯一のリアルではない、と振り返り、全く異なるあり方が可能である、ということをぜひ忘れずにいてください。それができればあなたの人生は必ずや光にみちた素晴らしいものとなるはずです。

 あなた方が社会での自分の居場所をきちんとみつけ、幸多き人生となることを心よりおいのりし、私のお祝いの言葉とさせていただきます。

 

令和四年三月十二日
学長  窪田 幸子